気持ちは「聞かない」が正解?

気持ちは「聞かない」が正解?

今回は、キャリアコンサルティング面談の中で深める必要がある「気持ち」についての解説です。

・どのように聞いたらいいのかわからない
・気持ちを聴いても堂々巡りになっていく
・でも、気持ちを聴かなければいけない

気持ちを「聞いたほうがいい」
実は、これは正しい解釈でもあり、間違った解釈でもあります。


人の心には「順番」がある


気持ちを「聞かなければいけない」と考えて面談に臨むと次のようになります。
これは面談が開始した段階のやりとりです。

CC「本日はどのようなご相談でいらっしゃいましたか?」
CL「最近、仕事を続けていけるか不安に思っていて、相談にきました。」
CC「仕事を続けていけるか不安。その不安についてもう少し詳しく聞かせていただけますか。」
CL「最近あまり仕事に集中できていないので、続けていけないような気がして。」
CC「続けていけない気がする。それはどんな気持ちですか。」
CL「えっと。不安、ですね。」
CC「不安ですね。もう少しそのお気持ちを聞かせてもらえますか?」

よくあるやりとりですが、このように、不安の奥深くにある感情が深まっていかないので、ずっと表面的なやりとりに終始して堂々巡りになってしまいます。

その原因はなんでしょうか。少し考えてみましょう。

・聞き方が曖昧すぎるからでしょうか。
・復唱、要約が足りていないからでしょうか。
・傾聴姿勢や共感的な態度ではないためでしょうか。


人の心には「順番」があります。

初対面の相手に、「私に心を開いて素直な気持ちを語ってください。」と言われているわけですので、だれだって抵抗があります。緊張もしています。

ですから、
いきなり気持ちを聞いてはいけないのです。

気持ちを聞いてもいいですが、まず間違いなくそこで語られる気持ちは表面的で、ありのままの気持ちではありませんので、面談は開始早々に行き詰ってしまいます。


では、なにから聞けばいいのか

それでは、なにから聞いていけばよいのか考えてみましょう。

キャリアコンサルティング面談の中で語られる内容は、それぞれその重さが異なります。
なにを聞いていけばよいか、というと比重の軽いものから取り扱っていくことです。

話しやすい内容(比重が軽い)

・今の仕事の内容
・仕事をしている業界
・これまでの仕事経験

②やや話しにくい内容(比重が中くらい)

・家庭の状況
・職場の人間関係
・経済的な状況

③話しにくい内容(比重が重い)

・ありのままの気持ち
・不安の根本的な要因
・葛藤の奥にある思い


話しやすい話題というのは主に「事実関係=コトガラ」です。
コトガラを聞いても気持ちを聞かなければ面談は進まないと考えがちですが、コトガラ=状況理解をしないまま気持ちを聞いても、その質問は重たいのに深みのない質問です。

相談者がどんな仕事をしていて、これまでにどんなキャリアを歩んできたのか。
「本当にイメージができていますか?」と相談者も思います。
相談者が普段どんな生活をして、どんな仕事の様子なのか。
キャリアコンサルタントの頭の中でありありと浮かんでいるからこそ、そのイメージの中で聴く「気持ち」に意味があります。


関係構築の視点からみた「気持ち」


関係構築を図るためには、気持ちを聞く必要がある。

これはまったく逆です。
関係構築ができているからこそ、気持ちを聞かせていただける権利がある。と言えます。

関係構築は、事実関係=コトガラのやりとりの中でも深まります。むしろ、相談者にとって話やすい話題だからこそ、相談者の言葉で伝え返し、安心してお話いただける関係をつくることができます。

キャリアコンサルタントの言葉ではなく、相談者の言葉で返すことの意味は、次の2つです。
・自分の言葉でしか返ってこない安心感=(傷つかない)
・自分の言葉が耳から入ってくることで理解が一層深まる

コトガラ=状況確認、の中でこの安心感をしっかりと固めていき、
この感じだったら、この人には気持ちを話しても大丈夫そうだ」と思うからこそ、気持ちを語ってもらうことができます。

コトガラは決して劇的な変化や展開を生むものではなく、インタビューとして軽く扱われるところがあります。しかし、その努力の積み重ねこそが気持ちを聞くための準備段階として重要というわけです。


関係構築が深まったあとに気持ちを聞くこと


さて、それでは比重の軽いコトガラから順番に関係を積み重ねたうえで、「気持ち」を聞いていきます。

面談の前半は次のように進めます。

CC「本日はどのようなご相談でいらっしゃいましたか?」
CL「最近、仕事を続けていけるか不安に思っていて、相談にきました。」
CC「仕事を続けていけるか不安。お差支えない範囲で構いませんので、まずは今のお仕事について教えていただけますか。」
CL「はい。今はIT企業で営業事務のお仕事をしています。」
CC「IT企業で営業事務のお仕事をされているのですね。普段のお仕事の内容を少し詳しく教えていただけますか。」



そして、面談の後半。
キャリアコンサルタントは相談者が普段仕事をしている状況を、仕事の内容や人間関係の視点からありありと想像ができるようになり、「気持ち」を聞いていきます。

CC「仕事を続けていけるか不安とのことでしたが、その不安について聞かせていただけますか。」
CL「えぇ。最近あまり仕事に集中できていないので、続けていけないような気がして。」
CC「続けていけない気がする。それはどんな気持ちですか。」
CL「続けていけないというか、続けてはいけないような気もします。」
CC「続けてはいけない?」
CL「はい。このまま続けていては、時間を無駄にしてしまっていないかと焦っているような・・・。」
CC「その焦りはなにに対する焦りだと感じますか?」

このように、信頼を積み重ねた関係の中では、「ありのままの言葉」が語られます。ありのままの言葉を本気で受け止めるからこそ、その深みにあるものを見つめる勇気が湧いてきます。

自分の心の中を見つめるのは簡単なことではありません。
つい、向き合いたくない気持ちから目を逸らしてしまうものです。だからこそ、心に波風を立てずに生きていられるのかもしれません。しかし、その安心の中にどこか「揺らぎ」のようなものがあり、その波紋が大きくなったものが「悩み」です。

ひとりでは向き合うことが難しいその気持ちに向き合うとき。人はだれかの寄り添いが必要になります。そのときに寄り添ってくれる人は、ありのままの言葉を否定せず、評価せず、そのままの自分でいられる特別な存在です。

それが、キャリアコンサルタントという存在なのだと思います。

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