事例の解説
「仕事と楽しく付き合うためのキャリアコンサルティングチャート」の活用事例を見てみました。このワークシートの手引きの中で、ひと際目を引くのは次の一文ではないでしょうか。
羽柴秀吉の草履取りのストーリーを単なる「ゴマすり」と理解しているか、全く理解していないような若者。
藤吉郎(豊臣秀吉)の「草履取りの話」をご存じでしょうか。
ある雪の夜、凍えるような寒い日です。
信長が女部屋からの帰りに下駄を履くと、温かくなっていました。信長は藤吉郎が腰掛けていたと思い込み、「この無礼者めがっ!」と一喝したそうです。信長は藤吉郎を杖で打ちましたが、藤吉郎は頑として「腰掛けてはおりません」と言い張ります。
信長が「温かくなっていたのが何よりの証拠だ」
しかし、藤吉郎は主君が草履を冷たく感じられないように、とその草履を自分の懐に入れて温めていたのです。それを証拠に、藤吉郎の胸元は草履の裏の泥で汚れていました。このことがあってから信長は、藤吉郎はよく心遣いの行き届いた小者だと認めるようになりました。
これが藤吉郎の出世の端緒であるとされています。
今回のワークシートでは使用の手引きにこの逸話について触れられています。秀吉の行動は「ゴマすり」という一面を与えるかもしれませんが、人への気遣いの細やかさ、寒い日に冷え切った草履を履いたときに足の裏に感じる冷たさを自分のことのように想像ができ、思いやりを持つことができる。そんな生き方を表しているようにも考えられます。
仕事には多くの側面があります。例えそれが今は意味のないことに思えても、後になって大切な価値観のひとつとして心の中に残ることもあります。「草履取りの話」は、現代のビジネス場面にも通じます。第三者から見るとまるで腰巾着のように見えても、その気遣いができることが社会人としてどれだけ重要な強みになるかという気づきを与えてくれます。
さて、今回の相談者の話を整理してみましょう。
・営業部に配属後、最初のうちは楽しいと思えた。
・研修が終わってからというもの急に手放しにされたような気がする。
・どうしたらいいかわからない、やる気が持てない。
・日々回ってくる仕事を右から左にやりこなしている。
・上京する前に想像していた明るいイメージではなく暗い感じがする。
社会心理学者のエドワード・デシ(Edward Deci)は、自分自身の興味関心な要因となって行動への動機を「内発的動機付け」であると説明しました。今回の相談者は仕事そのものに対する意味を見出せず、ただ右から左にこなしている感じを抱いています。誰にでもできるような事務処理をやらされていると思い、どうしてもやる気が持てません。
目の前の仕事が会社にとって、組織にとって、そして自分にとって、どのような意味があるのかを見出せない背景には、将来・キャリアとの連続性をイメージしにくいことや仕事理解の不足などの問題があげられるかと思います。今回のような相談者の場合、「仕事と楽しく付き合うためのキャリアコンサルティングチャート」を活用して改めて「仕事の意味」を考えていく必要があります。
上司、組織の立場から考えたときの意味、社会にとっての意味、お客様にとってのメリットなどさまざまな視点から深めることで、その仕事と楽しく向き合っていくにはどのような考え方ができるのかを考えていきます。キャリアコンサルタントは相談者の気づきを尊重しながら、しっかりと応答することで”意味を付与”していく役割が求められます。
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