相談者情報:Rさん、女性、38歳
略歴:高校卒業後、海外への留学・ホームステイなどを経験し、現在は日本語学校の教員として外国人生徒に対する日本語指導の仕事に15年以上従事。
家族構成:夫40歳(会社員・海外転勤中)、子供8歳
クライエントは海外志向が強く、旦那様の海外転勤にあわせて自分にも海外でのキャリアのチャンスが巡ってきたと感じています。しかし、お子さんのことで希望通りのキャリアを描けていない、描けないのではないかという葛藤を感じられています。
海外志向への気持ちは大変強く、お子さんに対する気持ちと”天秤にかけている”様子も伝わってきます。それくらい大事な思いであることにしっかりと寄り添う姿勢が重要です。お子さんをお持ちの方や、子育ての経験があると、お子さんに無理をさせるのはかわいそうだという気持ちが強く感じられるかもしれません。これには十分な注意が必要です。
今回の事例の場合、示されている選択肢はふたつです。
ひとつはお子さんを連れて海外に引っ越すという選択肢。もうひとつは国内に残って、クライエントひとりで子育てを続けるという選択です。前者に期待されるのはクライエントにとっての次のキャリアです。後者に対してクライエントはキャリアプラトーを感じています。
一方、前者のデメリットはお子さんに無理をさせるのではないかという気持ちです。後者のデメリットはキャリアの機会を失うのではないかという気持ちです。このふたつは同じ重さで揺れ動いています。ちょっとした刺激で片方に触れてしまうかもしれません。
ですから、キャリアコンサルタントはどちらにも傾いてはいけません。中立的に、クライエントの思いをただひたすら聴いて、うなずいて、共感的にかかわることです。共感的というのは、「お子さんへのかわいそうな気持ちはとてもわかります。」というかかわりではありませんね。
このようにかかわると、「やはり子どもがかわいそうですよね・・・。」とクライエントの意思決定を後押ししてしまう危険性があります。ひたすらに、「そうですか、そう感じるのですね。」とかかわることが重要です。
クライエントは迷い、悩んでいます。しかし、キャリアコンサルタントは少しでも早くその苦しみから解放してあげたいとは思わないことです。迷い、悩んで、自分で主体的に選択をしたという経験は人生に残る宝物です。今後、迷い、悩むことがあったときの道しるべになる経験です。
キャリアコンサルタントがその機会を奪ってしまうことはあってはいけませんので、主体性を尊重して、正しい意味での”他人事”としてゆっくり丁寧に聴いてあげてください。慌てなくともクライエントは自ら主体的に意思決定を行うことができます。
どんな人にも意思決定を行う力があり、その権利があります。キャリアコンサルタントにはクライエントの力を信じて、その権利を尊重するかかわりが求められます。






