相談者情報:Aさん、女性、34歳
略歴:大学卒業後、大手の広告会社に就職。妊娠と出産を機に退職。お子さんが3歳になったタイミングで食品系の企業に入社。事務職。
家族構成:夫33歳(会社員)、子供5歳
今回のロープレ事例のポイントを解説します。上司への苦手意識から転職を考えている相談者ですが、訴えたい気持ちは「転職を考えるくらい苦しんでいる。」という気持ちです。ここに共感的にかかわることが最も大切です。
キャリアコンサルタントを目指されている皆さんはキャリア理論から動機付け理論、労働環境のあり方まで幅広く勉強されていると思います。そこで、今回の事例に『やきもき』とした感情を抱いた方もいらっしゃるかもしれません。「根性論・やる気」と昭和の話ではないかと思いますよね。
クライエントがかわいそうに思えて、「その気持ちわかるよ」と同感したくなります。ただし、私たちキャリアコンサルタントは、共感することがあっても同感することはありません。
このことはリレーションづくりにおいても重要な姿勢です。どこまでもクライエントだけが感じられる世界の中での体験として聞かせていただくという姿勢を心がけましょう。
今回の悩みの本質は『上司への不満』です。クライエントは繰り返し上司への不満を吐露していますが、一方で「諦め」「呆れた」という悔しさを通り越した落胆のような気持ちを抱えています。この気持ちに気づきを持ってほしいと思います。クライエントの不安は上司に対するもので、主訴にある「良い転職先を相談したい」ということではありません。
「もし、上司が変われば転職への気持ちも変わりますか?」
このように質問することで悩みの本質が明確になります。悩みの本質が取り除かれたときに、考え方が変わります。すると、クライエントの中で、悩みの本質は『上司』のことであるとようやくここで悩みの本質に向き合うための心の準備が整います。
問題として指摘しました価値観・べき思考についてかかわっていくのはこのあとです。クライエントと悩みの本質についてお互いに理解を深め、納得し、そして本質的な解決に向けて取り組んでいく。そのための良き伴走者がキャリアコンサルタントです。
優しさをもって、良き伴走ができるキャリアコンサルタントをぜひ目指してください。
解答例です。
①良い点
上司のどんなところが苦手に感じるか、職場がどうあってほしいか、など前半ではクライエントの思いや考えを傾聴する姿勢が見られる。
②改善点
後半にかけて「転職」にフォーカスした質問が多く、転職という解決策に向かう面談になってしまっている。
③正しい応答例
「呆れたというお気持ちを感じられているのですね。もし、上司が変われば転職への気持ちも変わりそうですか?」







