事例をお読みいただき、キャリアコンサルタントからの応答についてどのように感じましたでしょうか。率直に感じた気持ちが大切な経験になります。
「なんとなく親身ではない感じ」「話を聞いていない感じ」
このように感じる方が多いかと思いますが、中には「これくらいズバズバ言ってくれたほうがいい」というクライエントもいるかもしれません。しかし、キャリアコンサルティングの目的は”クライエントの主体性を尊重する”ことにあります。
キャリアコンサルタントが主体となって面談が進んでいくとクライエントはいつまでも自らの足で一歩を踏み出すことができません。どこまでもクライエントが主体であることを考えると、今回のキャリアコンサルタントからの応答のどこが相応しくないと言えるか浮かんでくるのではないでしょうか。
最初の応答から見ていきましょう。
(保育園が決まったのですね。それはおめでとうございます。仕事復帰ができる希望があって、企業を探しているけれども、お子さんが保育園でうまくやれるかが不安なのですね。)
まず「おめでとうございます。」という声掛けです。同様の声掛けに「それは残念ですね。」「それは素晴らしいことですね。」などの表現があります。日常生活では使われる表現ですが、キャリアコンサルティングやカウンセリングの場面ではこのような表現は控えます。
それはなぜでしょうか。
おめでたい、残念、素晴らしい、といった形容詞はクライエント自身が内面で感じる気持ちです。キャリアコンサルタントが考えるその出来事に対する評価を与えることはクライエントの内面から遠ざかってしまいます。
例えば、出産・結婚はおめでたいことで、離婚・失業は残念なことでしょうか。「転職を決断した。」果たしてクライエントにとって「素晴らしいこと」でしょうか。それはクライエント自身にしかわかり得ません。出産・結婚をしたことで悩みがあるかもしれませんし、離婚・失業によってこれまでの悩みが解決に向かっているかもしれません。
転職を素晴らしいと思うのはキャリアコンサルタントの価値観です。
大切なことはクライエント自身から語られた言葉で応答することです。キャリアコンサルタントの言葉で返すとクライエントの内面に触れあうことができません。
続く応答も同様にキャリアコンサルタントの考えで応答しています。
「お子さんが保育園でうまくやれるかが不安」
その後にキャリアコンサルタントから語られていますが、これはキャリアコンサルタント自身が経験したことがある気持ちです。この段階でクライエントは、今抱えている不安について具体的には仰っていません。
キャリアコンサルタントは、占い師のように相談者の気持ちを”当てたり”、精神分析家のように”解釈”するのではなく、ありのままのクライエントの言葉をそのままの思いを受け止め、お返ししてあげることが大切です。
クライエントはさらに主体性を低下させ、「どうしたらいいでしょうか・・・。」と悩みを深めてしまっています。これに対するキャリアコンサルタントの応答です。
(そうですね。ブランクが空くのはキャリアにとってはよくありませんので、早めの復帰をおすすめします。まだお若いですので、今のうちなら入社できる企業もたくさんあると思いますよ。どのような企業を検討されているのですか。)
「ブランクが空くのがキャリアにとって良くない」というのもキャリアコンサルタントの考えです。
キャリアコンサルタントは続けて、復職にフォーカスを当てて面談を進めようとしますが、クライエントは躊躇している様子が伝わってきます。それもそのはずです。復職しようと心に決めて主体的に動き出そうとしているのであれば、キャリアコンサルタントに相談にくることもなかったでしょう。
なぜ、キャリアコンサルタントに相談にきたのかと言えば、その不安の正体に自分でも気づきを持てずにいるためです。主訴=最も訴えたい気持ちを理解して、深めるようにかかわっていくことが大切です。






