▮ キャリアプラトー
『プラトー』(Plateau)とは、高原または台地の意味です。キャリアをある程度上り詰めてしまって、これ以上は上が望めないと感じている状態です。多くの場合、目標を見失い、モチベーションの低下を感じています。
40歳以降の中年期に陥りやすく、組織(会社)でこれ以上、昇進昇格できないと考え、その後の目標が見いだせない状態のまま働いていることを指します。
日本では、未だに終身雇用の考え方が根強く、現代の中高年層は組織の中でキャリア形成していくものであるという考えを持っている世代と言えます。しかし、グローバル化の進展により国内の企業経営は多様化し、これまで当たり前にあったポジションがなくなり、また、早期退職をうながす企業も増加しています。
以上のような社会的背景もあり、現代社会ではキャリアプラトーに陥る相談者も多いことかと思います。
▮ バウンダリーレスキャリア
働き方の多様化によって、バウンダリーレスキャリアの考え方にも注目が集まっています。バウンダリーレスキャリアとは、1996年にArthur and Rousseauによって提唱された、キャリア理論の一つです。会社や職種などの境界(バウンダリ)を超えて、自由にキャリアを形成していくという考え方を示しています。
バウンダリーレスキャリアを実現していくためには、『リスキリング(学び直し)』が不可欠です。近年では「教育訓練給付」や「公共職業訓練」の対象にならないフリーランスや非正規雇用者等に対するリスキリング機会の創出にも注目が集まるなど、キャリア形成とリスキリングとの関係性は深くなっています。
バウンダリーレスキャリアが求められる背景には変動性の高い現代社会があります。現代はVUCAの時代とも呼ばれます。2020年に猛威を振るった新型コロナウイルス(COVID-19)、2024年の年明けには能登半島を襲った大地震。予測不能な感染症や災害、さらにはAI技術の急激な進化により世の中の変化を予測しにくくなっています。この先もどのように変化していくのか、予測が難しい状況といえるでしょう。
このように今後の予想がしにくい状況をVUCAと表現します。VUCAとは、Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの頭文字を取った造語で、社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のことを意味します。
Volatility(変動性)
Uncertainty(不確実性)
Complexity(複雑性)
Ambiguity(曖昧性)
まさに新時代の特性を表している4つの要素と言えます。こういった社会背景の中で、労働者は自らの力で主体的にキャリアを形成していくことが求められています。労働者がキャリア形成することは、一方で企業からすると流出のリスクと捉えられる場合がありますが、リスキリングによって従業員のスキルアップを図ることは自社の経営リソースの質を高めることにも繋がります。
▮ プロティアンキャリア
新時代に生きる労働者に求められることは、変化に対して柔軟に向き合える力と言えます。このことをいち早く提言した心理学者がアメリカのボストン大学経営大学院教授で心理学者のダグラス・ホールです。
ホールの理論で最も特徴的な考え方は、キャリアはひとつの組織の中で長く形成していくものではなく、組織に依存せずに個人によって『変幻自在(プロティアンキャリア)』に形成されるものであるとしたことです。
『プロティアン』とは古代ギリシャのプロテウス神からきた言葉で、変幻自在であることを示しています。常に学びを続けることで、人生やキャリアの方向性を再構築していく能力のことを言います。さらに、学習を継続することはモチベーションの創出と共に自らの価値を見出して、目的とゴールを達成する心理的成功のインサイトになることも説明しました。
従来のキャリアは組織(雇用者)によって評価されるものでした。一方でホールはこれに異を唱え、キャリアは自らが評価するものであり、その成功を定義するのも自分であるという考え方をしています。
驚くべきことに、プロティアンキャリアが提唱されたのは、1976年のことです。
半世紀前には現代に通ずるキャリアの変容性について見通しがあり、まるで日本の未来を予言したかのようなキャリア理論を発表しているのです。ホールが予見したとおり、不確実な現代社会が浮き彫りになったことを示していると考えられます。
▮ パラレルキャリア
最後に、パラレルキャリアについてです。近年、副業を解禁する企業も増え、新たなキャリア形成の方法として『パラレルキャリア』という働き方が注目されています。
人生100年時代を迎え、個人の価値観や人生観は多様化しています。職業観もまた、「1つの会社で長く働く」だけが唯一のキャリア形成ではなく、先に紹介したバウンダリーレスキャリアや、プロティアンキャリアのように柔軟なキャリアを築く必要性が求められている。国も主体的なキャリア形成を推奨しており、キャリアコンサルタントの有資格者数を引き上げる取り組みがされています。
これまでの終身雇用という考え方は主流ではなくなり、転職も一般的になった今、複数の職場でやりたいことを実現するのが、パラレルキャリアの考え方です。
キャリアコンサルタントはこのことをよく理解して、相談者のパラレルキャリアを形成するための支援を提供していく立場になります。相談者の強みや価値観をしっかりと共有し、自ら主体的にパラレルキャリアを築いていくための支援は、今後さらなるニーズの高まりが予想されています。
以上、学科対策として4つのキャリアに対する考え方を見ていきました。いずれの概念もテーマが近しいものではありますが、それぞれの特徴や性格、その背景について理解しておくと安心です。






