カール・ロジャーズは人間性心理学の立場から『非指示的療法』を提唱した心理学者です。
氏によるカウンセリング理論は後に『クライエント中心療法』に改められ、現代カウンセリングの礎を築きました。
その背景にある基本的な人間観は、”主体性の尊重”にあります。本記事では、カール・ロジャーズの理論背景や基礎的な知識を見ていきたいと思います。
来談者中心療法
クライエントはどこまでも、”独自の存在”で、”全人的”に受け止められる必要があります。クライエントはその個性と生き方を尊重されることで、主体的な生き方を選択できるようになっていくという考え方に基づいています。
このことを強調したのがカール・ロジャーズです。
カール・ロジャースは1900年台、パーソンセンタードアプローチ(来談者中心療法)を創設し、『人間性心理学』を提唱した代表的な心理療法家です。
人間性心理学は精神分析や行動主義に並ぶ3大心理療法とされていますが、現代に生きる我々が”カウンセリング”と聞いて想像するものはロジャーズを中心として発展したパーソンセンタードアプローチ(来談者中心療法)に他なりません。
ロジャーズの基本姿勢
日々の生活で私たちは自分の経験・考え、または価値観をもとに相手とのコミュニケーションを行っています。
例えば、私が日常生活で甘いものを食べない人だと仮定します。会話の相手が甘いものを食べに行った話を私にしても、私の経験・考え・価値観には合わないために、相手はそのコミュニケーションに喜びを感じません。
いかに取り繕ったとしても、日常生活で私たちが自分の価値観に照らし合わせてコミュニケーションをとっている以上、無意識の下でその居心地の良さや悪さはお互いに伝わります。
相手も同じ価値観を持っていることが伝わり、同感を得られたと感じる瞬間に「わかってもらえている」という喜びや安心、カタルシスのような健やかな気持ちになれます。
一方、カウンセリングやキャリアコンサルティングにおけるコミュニケーションの最たる特徴は”非日常的である”ということです。
非日常的であるということはつまり、特定領域(臨床やキャリア理論等)の学習や訓練を受けた専門家によって技術的に行われるかかわりのことを指します。ここではカウンセラーやキャリアコンサルタントは自らの経験・考え・価値観に照らし合わせることはなく、クライエントのそれを理解しようとするかかわり=『共感』が技術的に行われています。
日常会話の例では『同感』と表記しましたが、共感と同感を感覚的に理解できていることはカウンセリングの基本的な姿勢に直結します。
日常生活で『共感性』が高い、低いという表現があります。
カウンセリング領域ではこのときに表現されている共感性は『同感性』になります。共感とはカウンセリング技術にささえられたかかわりであり、専門性を要するものです。
それでは、ここでいう専門性とはどのようなものでしょうか。
共感の背景にある基本的な考え方からみていきましょう。
一人ひとりが独自の存在である
カウンセラーやキャリアコンサルタントが共感的にクライエントにかかわる背景にある基本的な姿勢に、”一人ひとりが独自の存在である”という人間観があげられます。
ロジャーズが示すクライエント中心療法で繰り返し強調されていることは、カウンセラーは自らの経験や価値観から助言(指示)を与えることはないということです。人は”一人ひとりが独自の存在”であるため、その悩みをさも自分が経験したことと重ねることはできません。
”一人ひとりが独自の存在である”が故に、クライエントを尊重し、その悩みに対して深く傾聴し、共感的に理解に努めることに重きを置いています。
先ほどの例で、甘いものが好きな人とカウンセラーが対話をしたと仮定します。
日常生活であれば自分も甘いものが好きであれば同感的にかかわることができますが、そうでなければ同感はできません。一方、カウンセラーは同感ではなく、共感的にかかわっていく存在です。
「甘いものが好きなんですね」と暖かく、積極的関心を示すことでクライエントは心を穏やかにその考えを深めていくことができます。
このときの関係性が『安全な信頼関係』です。






