以下の記事も参考にしてください。
カール・ロジャーズ=共感というイメージが先行するほど、氏の理論の中では有名です。その一方で共感という言葉から想起されるその言葉の意味は正しく伝わっているでしょうか。
ロジャーズは共感的理解を次のように説明しています。
「ありのままで嘘偽りない、しかも温かく肯定的な配慮を示すカウンセラーの態度があれば、クライエントはカウンセラーを信頼することができ、安全に自分を語り、自己探求していくことができる。
もう一つのきわめて重要なカウンセラーの態度は、クライエントの語りや表現、さらにはその底にある感情についての、正確で共感的な理解である。
共感的理解とは、クライエントの視点(内的照合枠・内的準拠枠)からクライエントが表現していることや感じていることを、カウンセラーが感受性豊かに、そして正確に感じ取り、理解することである。
これは共感(empathy:感情移入)と言われる。」
さらに重要な点をロジャースは次のように説明をしています。
「共感的理解は、クライエントが体験し、感じていることをクライエント自身がより豊かに丁寧に探究するのを促進し、援助する。共感的理解において重要な点は、それがクライエントへの同情(sympathy)や同一視(identification)に陥らないということである。」
「共感」と「同感」の違いについて、カウンセリング理論の視点で気づきを得られると、そのかかわり方や表情、態度、言葉が大きく変わります。
感覚的な学習は形式的に理論を学ぶことよりも難しいことです。これはカウンセリングやキャリアコンサルティングのシーンを想像するとさらに難しく感じることかと思います。
少し身近な話題に置き換えて感じていただけるワークを用意していますので、ありのままの自己一致した気持ちで読み進めてみてください。
「その気持ちわかるよ」
日常生活において共感性が高いと表現される場合、その多くは同感に近しいソーシャルスキルを指しているかと思います。共感とは非日常のカウンセリング場面における特別な体験といえます。
Aさん「こないだのミスのこと部長に怒られちゃって・・・」
Bさん「私も同じミスをしたことがあるから気持ちわかるよ」
このような日常場面で表現されている「気持ちがわかる」というのが同感です。Aさんが体験したことは果たしてBさんとまったく同じ感情体験でしたでしょうか。同じような出来事であったとしても同じように受け止めているとは限りません。
Aさんはミスのことは気に留めていなくて部長に怒られたことになんらかの思いを抱えているかもしれません。しかし、Bさんは同じミスをしたことがあるので、そのミスそのもので自分を責めてしまうような気持ちを経験しているかもしれません。
体験ワークショップ「共感的理解」
それでは3本のペットボトルドリンクを用意してください。
お菓子でも大丈夫です。
この場では用意はできないという方も多いかと思いますので、イメージをしながら読み進めてみてください。
そのうちの2本は同じ銘柄、1本は同じ飲み物で違う銘柄にします。お茶でも、オレンジジュースでも構いません。ここではわかりやすく例のためにコカ・コーラを2本とペプシ・コーラ1本で説明します。
※コーラとペプシの味は似ているけど違うものという前提です。
そして、身近な人に協力をしてもらいます。
まず最初に二人ともコカ・コーラを飲みます。その味わいや喉越しを体験してください。そして相手にもその感想を求めます。
このときに相手から表現された感想は自分も近しい体験をしていますので、同感ができます。「爽やかな、冷たく冷えた、のど越しがよい」感じた気持ちを形容詞で表現しながら同感を体験してみてください。
次に、相手にはペプシ・コーラを飲んでもらいます。自分は先ほどと同じようにコカ・コーラです。そして、相手に感想を求めます。
「軽い感じ、すっきりした、キレ味がいい」
共感の場合は、自分とは違う体験をしている相手の気持ちを理解する立場をとります。私はコカ・コーラを体験したことがあるが、それは同じコーラでもペプシ・コーラとは違う。相手はペプシ・コーラに対して、「軽い感じ、すっきりした、キレ味がいいことを体験しているんだ」と相手にしかわからない気持ちを理解しようと努めます。
私の気持ちは私だけのもの
ペプシ・コーラを飲んだ相手に対して、「そうだよねー、コーラって美味しいよね」と反応する日常の場面を同感と表現することに対して、「そうなんだ、ペプシ・コーラって美味しいんだ」と相手だけが体験している特別な感情を理解する気持ちが共感です。
共感の場合には相手の気持ちを完全に理解しきれるという立場を取りません。なぜなら、その体験は相手にとっての体験であって、同じような体験をしていても同じ気持ちを体験したとは限らないためです。
「しんどい・・・」というときに、そのしんどさを「わかるよ!」と言われてしまうと、自分のしんどい気持ちが軽んじられる感じがしませんか?
それが同感的な「わかる」だからです。
ロジャースが本当に伝えたかったことは、
「相手の気持ちは相手だけの特別なもの」として”感じる”ことの重要性であったといえます。
同感は「me too(私も同じだよ)」に対して、共感は「i see(そうなんだね)」と表現ができるかもしれません。一見すると共感は他人事のような視点を持つことになります。自分の経験で理解することができない相手だけの思い=他人事を正確に思いやりをもって受け止めることではないでしょうか。
同じピザにも楽しいピザもあれば、悲しいピザもある。
ピザを食べることが少ない日本では、ピザを食べる食卓に特別な意味があります。これはクリスマスのフライドチキンにも同じように「象徴的な食卓文化」といえます。
読者のみなさんは「ピザを食べる」その食卓にどんな思いを感じるでしょうか。
家族団らんの暖かさやお祝いの喜びでしょうか。多くの人はそうかもしれません。
ところが、お父さんとお母さんがケンカをした日は必ずピザだった家庭ではいかがでしょうか。
目の前で一緒にピザを食べる体験を共有していても、同じ味だったとしても、ピザを食べるときの「思い」は人それぞれと言えるでしょう。それが内的準拠枠です。
同じ出来事でも相手がそれをどう感じているかに集中して聴いていきましょう。
【引用・参考文献】
ロジャース,C.R.,2005 クライアント中心療法 (ロジャーズ主要著作集)保坂 亨 (翻訳), 末武 康弘 (翻訳), 諸富 祥彦 (翻訳)Client-Centered Therapy: Its Current Practice, Implications, and Theory. 1951
≫カール・ロジャーズ「クライエント中心療法」
カウンセラーの心の中を体験する7つの事例プログラム
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