ロープレにおける質問の目的は10に大別できます。ここで紹介する質問の目的は、実技試験(口頭試問)において、正確な自己評価ができているかの重要なポイントになりますのでしっかり抑えておきましょう。
(1)今の面談で「できたこと」は何ですか。
目的(=質問をした根拠)を理解していると、このように問われたときにキャリアコンサルタントとして発言・応答した場面を例に、どういった目的でクライエントにかかわり、その結果としてなにが得られたのか、その根拠を具体的な言葉で説明できるようになります。
試験官からすると、「この受験生は根拠に支えられたかかわりを意識して実践できており、またそれを客観的に評価する力量がある」と判断できるわけです。 実際の面談場面でもキャリアコンサルタントが質問をする際には必ずなんらかの目的をもってクライエントにかかわっていきますので、意識して使えるように練習しておくと安心です。
ラポール形成
受容(あたたかさ)と共感的理解を示すことでクライエントの間にラポール(=信頼関係)を形成することを目的とした質問です。ラポールは主に傾聴によって築かれますが、質問技法でも同じ立場で考えることができます。あたたかい質問によってクライエントが、受け入れられ、ありのままの自分で思いを表現できるようになる。これによって面談を進展させていくねらいがあります。
カール・ロジャーズは、クライエントはどこまでも独自の存在で、全人的に受け止められる必要があり、その個性と生き方を尊重されることで、主体的な生き方を選択できるようになっていくと説明しています。
キャリアコンサルタントとの関係性にラポールが形成されることは、クライエントの主体性回復に必要不可欠な要素といえます。
情報収集
面談プロセスの前半では、相談内容・来談背景の確認を行います。実際の面談ではクライエントのお話と同時並行してキャリアコンサルタントからも事実関係と気持ちを聞いていきます。
情報収集は、事実関係や気持ちを把握することを目的としています。面談の早い段階ではまず周辺的な事実関係を確認していき、ある程度の事実関係が把握できたところから気持ちの質問に移っていくと良いでしょう。
情報付与
キャリアコンサルタントからクライエントに対して、情報を与える場面があります。これはクライエントの認識に客観性を持たせたり、または判断材料を与えることで主体的な考えができるように支援するねらいがあります。
焦点付け
クライエントの話す内容がキャリアコンサルティングで意図する問題解決の方向性と大きく外れていたり、明らかに無駄話や無関係の話題を繰り返すようなクライエントに対して、キャリアコンサルティングの場面を構造化し、問題と向き合えるように方向付けることを目的としています。
以下に焦点付けの例文をあげます。
CC「来談された際のお話では〇〇でしたが、その点についてのお話をお聞かせいただけますか?」
CC「今のお話は、〇〇さんが現在お困りの〇〇という内容にどのように関係していますか?」
方向が定まらない場面はクライエントに悪意があってのことではなく、混乱している状況や頭の中を整理ができない現状である前提に立って、丁寧にラポールを維持しながらかかわっていきます。
明確化
クライエントが話す内容の曖昧さ、不完全さ、混乱や矛盾に対してキャリアコンサルタントがかかわっていき、問題に具体性を持たせる質問です。
CL「今の仕事をどうにかしようかなと思っています。」
CC「お仕事を変えたいと思っていらっしゃるのですか?」
この質問は面談の中で問題を明確にしていくことを目指しますので、クライエントの反応がYESでもNOでも構いません。仮に「そうではありません」と返ってきたとしても、「仕事を変えたいわけではない」という新たな情報が把握できたということになりますので、明確化の目的は果たしています。
明確化を目的とした質問場面では、決してクライエントの悩みを当てようとは思わずに、クライエントと共に情報を整理していく作業と考えます。
意味付け
クライエントの置かれている状況に新たな意味を与えるためのかかわりです。多くの悩みはクライエントの中でその意味や視座が変化することで、希望が灯され、主体性が回復されます。例えば次のような場面があります。
CL「先日、異動の打診がありました。異動先の部署は希望していたわけではなく、部長は私のことを考えてくれていないのではないかと思います。」
CC「部長は〇〇さんが異動先での仕事経験を積むことで、将来どのような活躍を期待されていると思いますか?」
企業の異動・昇進・昇格・転勤などの人事的なイベントは会社都合によるところだけではなく、社員の成長を促す機会提供の意味があります。上記の例でCLはその意味を前向きに解釈できておらず、異動にネガティブな思いを抱いています。
そこで、キャリアコンサルタントは、異動というイベントに対して、新たな意味を付与します。
「部長はCLに異動先での経験、成長機会を与えることで、将来への活躍期待を込めている」
このように問いかけることで、異動というネガティブに思えた出来事は、将来に向けた成長機会であると物事の捉え方を変えることができます。このことをリフレーミングと呼びます。
例えば、コップに半分入った水を「もう半分しかない」と捉える人もいれば、「まだ半分も残っている」と捉える人もいるわけですね。
フレーミング(=考え方の枠組み)が変わることで、クライエントは自信を取り戻し、本来持つ主体性を回復して自己実現傾向に向かっていきます。
意味付け質問にはそれだけ大きな力がありますので、キャリアコンサルタントとしてぜひ磨きたい技術です。
カタルシス
カタルシスとは、心の中に溜まってしまったネガティブな感情を解放(=浄化)することです。クライエントは直面する出来事の中で心の中に言葉や感情をため込んでいます。このとき、クライエントはひとりで悩みを抱えている心理状態にあるわけですが、キャリアコンサルティング面談でその思いを語ることができると気持ちが和らいでいきます。
「話す」という言葉がありますが、心理相談の場面ではこれを「離す」と表現します。
心の中に渦巻いている嫌な言葉や不安な気持ちをひとつひとつ離していくことで楽になり、ようやくそこから問題に向き合う心の準備が整います。
ケースによってはクライエントが面談の場でほとんど一方的に話をしただけで自己解決に向かっていくという場合もあります。カタルシスにはそれだけの効果がありますので、重要なキャリアコンサルティング技術と言うことができます。
特定
広義には問題を把握するための質問はすべてが特定に当たりますが、ここでは狭義の概念として取り上げます。
クライエントは困難な状況の中にありますが、困難な状況そのものについてはキャリアコンサルタントが扱う問題ではありません。キャリアコンサルティングで扱う問題はクライエント自身の考え方と行動です。
例えば、職場の人間関係に悩むチームリーダーがいます。彼は多忙で部下とのコミュニケーションが取れないと訴えます。それが原因で関係が悪くなっていると言います。
クライエントが感じている困難な状況は、職場の人間関係(が悪いこと)です。これに対してキャリアコンサルタントは直接的に介入できません。介入すべきは、多忙で部下とコミュニケーションがとれないというクライエントの考え方と行動です。キャリアコンサルタントは、これが不適応な状況を生じさせている原因ではないかと見立てます。
このクライエントは多忙が故に部下とのコミュニケーションが取れず、コミュニケーション不足によって人間関係が悪くなっていると考えています。
しかし、キャリアコンサルタントが見立てる原因は、仕事をひとりで抱え込んで部下と協力をして仕事ができていない彼自身のコミュニケーションと仕事能力の問題です。
このように原因となる行動を特定し、かかわっていきます。
CC「新しい仕事が発生したとき、〇〇さんはどのように仕事を進めるのでしょうか?」
CC「部下の方々も多忙を極めてお互いにコミュニケーションが取れないような状況なのでしょうか?」
面談を進める中で、クライエントは自分だけで仕事を抱え込む傾向があること、それが部下とのコミュニケーション不足に繋がり、結果として職場の人間関係が悪化しているのかもしれないと気づきを得ていくのです。
強化
クライエントの心の奥底に隠れた思いに気づきを与えて、その思いを深めていくための質問です。クライエントはなんらかの思いによって行動が起こせなかったり、悩みを抱えたりしています。その思いに本人が気づいていないケースも多々あります。
CL「ある部下のことで悩んでいます。かれは本当によく仕事ができて優秀なのですが、独断で仕事をしてしまうことが気になっていまして・・・。」
CC「〇〇さんは部下のお人柄をどうお感じになりますか?」
CL「人柄ですか?それは・・・少し苦手なタイプと言いますか・・・。」
CC「苦手に感じる気持ちをもう少し詳しくお話いただけますか?」
クライエントはある部下のことを優秀だと表現する一方、独断で仕事をすることをどこか良く思っていない様子が感じられます。部下の仕事の進め方は上司がマネジメントすべき問題ですが、それとは別のなにかが心の奥底にあるために悩んでいるのです。
彼は部下のことを心の奥では苦手だと思っています。自分と違うタイプだと無意識に感じているからかもしれませんし、もしくはすごく似ているところがあるのかもしれません。なぜ、苦手意識を持つのかはクライエント自身にしかわかり得ませんが、キャリアコンサルタントは、クライエントが心の奥底で感じている気持ちを強化していくことで問題を把握していきます。
促進
最後の目的は促進です。キャリアコンサルタントとクライエントの関係性をイメージしながら解説をしていきたいと思います。
キャリアコンサルティングをマラソンに例えると、クライエントはランナーで、キャリアコンサルタントは伴走者です。道に迷いながらも、進んでいくクライエントに寄り添い、道を決めて進んでいくまでのプロセスを見守ります。
クライエントは道を決めかねています。
「こっちの道がいいと思うのだけど、まだ決め切れない。」
キャリアコンサルタントの仕事はその道を後押しすることではありません。なぜ、その道がいいと思うのか、クライエントの内面に対して洞察や無意識的な動機付けの理解促進を行うことが役割です。
以上が、ロープレ質問10の目的です。
キャリアコンサルタントは思いつきで質問することはありません。なぜその質問をしたのかを説明ができるようにかかわっていきましょう。






